ホラアナグマUrsus spelaeus
体長:2.4〜3m新生代洪積世後期(27万〜2万年前)

 ヒグマに似た大型のクマで、洪積世のヨーロッパを代表する動物のひとつ。復元された骨格や洞窟に描かれた絵から推測すると、額が突き出ていて、肩が著しく盛り上がっていた。
 ある頭骨は526mmもありこれは現代のどのクマよりも大きい。後脚で直立すると高さ3.6mに達したと言われる。


 ホラアナグマの全身骨格は意外に少ないようだ。左の写真(体長2.7m)はスイスの Wildkirchli cave で見つかったもので、ほぼ7万年前のものといわれ、現在は Saint Gallen の Heimat Museaum に保存されている。この骨格は実際より頭が高く据えられていると指摘されている。

 一説によるとホラアナグマにはおそらく2種があって、小型種は西シベリアや中央アジアにまで分布を広げていたという。小さい方は現在のヨーロッパのヒグマとほぼ同大、体長1.7mくらいだった。また、氷河期には体が大きくなり、気候の温暖な間氷期には小型化したのだとも言われる。
 ホラアナグマはヒグマよりもがっしりとした体格をしていたが、歯列からはより草食的な食性だったと推定されている(クルテン、1971)。

 ホラアナグマの化石は各地の洞穴から多数発掘されており、1つの洞窟から100頭分以上の骨格が出たこともあり、群生していたのではとの意見もある。しかし暗くて危険な洞窟にクマが適応できていなかったために、深い穴に落ちて這い上がれずに死んだともいう。
 また冬眠している間に病気になったり、雪解けの水が流れ込んで溺死したものもあったようだ。

 イギリス・ケント州 Brixham の洞窟からは354頭分のホラアナグマの化石が出土しているが、他にサイ(67)、ウシ(28)、ゾウ(11)、そしてハイエナ(57)、ライオン(7)等の化石もでている(鹿間、1979)。
 これらの動物の相互の関係はどうだったのか? 複数種の肉食獣が同じ洞窟にいたということは、ハイエナの群やホラアナグマ、ホラアナライオンの間で獲物の争奪戦があったと推測されるのだが…
 ヴェレシチャーギン(1979)は氷河時代の人類にとってホラアナグマは重要な資源だったと考えている。ホラアナグマの肉と脂肪は寒い冬の大切な栄養源であり、毛皮は洞窟の床に敷かれベッドとなった。当時の人類の洞窟住居を発掘した考古学者は人の手で割られた無数の頭骨を発見している。

 ホラアナグマだけでなく、洪積世のユーラシアにはすでに現在のものと同種のヒグマも生息していた。そしてホラアナグマに匹敵するほど大きかった。そしてかなり後になってアメリカ大陸に進出している。
 洪積世のアメリカ大陸には現代のメガネグマに似たクマ類が生息していたが、そのひとつ、脚の長いショートフェイス・ベア Arctodus simus は体重が600〜800kgもあったようだ。

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